花霞記

社会人の日記

バイト先 2

 

  彼は言った。

大河と呼ばれてみたいと。

 

   なんでも名前でモテるとかモテないとかも決まってくる。澪でレイくんとか、蓮くんとかは勝ち組らしい。

   モテない澪くんは、澪くんではない誰かだ、と付け加えて彼は言った。

 

 

──そう、言わずもがな時代はナカナホリ。

   世間では名前が意味をなさなくなっていた。マイナンバーとか、出生時にJAP-からはじまる数字の羅列で個人を識別する。それのICチップを人体に埋め込んでいく。またカメラ技術の向上で顔や瞳孔でも個人とリンクし特定できる。 

   名前はニックネームのようなものへ昇華された。流行り廃りで変更していくもの。たとえば、影響を受けた映画から、タレントから拝借する。被りすぎると地名や古い書物からの引用でオリジナリティを追求していく。   

   今日は大河、明日は晶。気分で名前を変更するから、名前負けなんて言わせない。

   名前もファッションの一部となる。

 

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